高速マニピュレーション

ジャグリングにおける人間の美しい滑らかな動作はロボッ ト研究者を魅了し,古くから多くの研究が行われてきた. 人間にとって,ジャグリングはエンターテイメントとしての楽 しみとなる一方で,身体をうまく扱うために大切な訓練にもなる. 同様にロボットにとっても,知能と技能の統合のモデルケースとなる. 本研究室でも,器用さと高速さを両立するマニピュレーション技術を目標に研究開発を行っている.

システム

ジャグリング

インハンドマニピュレーション

モデル予測軌道生成によるハンドアームの投球動作制御

ロボットアームの先端に多指ハンドを装着したハンドアームロボットではハンドとアームを協調させることで,広い可能範囲と精密な操りを両立させることが可能である.一方,ハンドの重量が重いために高速な動作を実現するのが難しいという問題があった.我々の研究グループでは,高速動作の一例として,ハンドアームを用いたボールジャグリングの研究を行ってきた.しかし,ボールジャグリングを構成する投げ動 作とキャッチ動作のうちで,特に投げ動作の精度が低いことが原因で繰り返し回数が伸びなかった.正確な投げ動作のためには,アームによる加速度運動の制御と,指によるボールを放す位置,速度,タイミングの制御が必要である. これに対して,本研究では,応答の低いアームの動作の遅れを,応答の高いハンドの動作によって補償することを考える.具体的には,アームとハンドのダイナミクスモデルに基づき追従誤 差を予測し,モデル予測軌道生成(Model Predictive Trajectory Generation: MPTG) に基づきハンドの目標軌道を修正する.
  1. 坂口 成希, 並木 明夫, ハンドアームロボットの投球動作におけるボールの運動推定, 第23回計測自動制御学会SI部門講演会(SI2022, 12/14-16, 幕張メッセ国際会議場), 1P2-H16, 優秀講演賞
  2. 高橋 晃,佐藤 将貴,並木 明夫, 投球動作における高速多指ハンドアームの動的補償, 第26回ロボティクスシンポジア講演論文集
  3. 高橋 晃,佐藤 将貴,並木 明夫, モデル予測制御のマクロマイクロマニピュレーションへの適用, 第8回制御部門マルチシンポジウム, 2D1-5
  4. Akira Takahasi, Masaki Sato, and Akio Namiki, Dynamic Compensation in Throwing Motion with High-Speed Robot Hand-Arm, 2021 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA), 2021
  5. 高橋 晃,佐藤 将貴,並木 明夫, 投球動作における高速多指ハンドアームの動的補償, SI2020(第21回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会), 3D1-06, 2020

双腕多指ハンドアームによる3ボールジャグリング

ステレオ高速ビジョンと2台の高速ハンドアームを用いてボールジャグリングの研究を行った. (1)効率的な投げ上げ軌道生成,(2)高速視覚フィードバックによる高精度キャッチング,により,3つのボールを両手でジャグリングすることに成功した.
  1. 高橋 晃,甲村 直大,並木 明夫, 高速双腕ジャグリングロボットにおける最適軌道生成, 第37回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 1H1-06, 2019

多指ハンドアームによる片手ボールジャグリング

ステレオ高速ビジョンと高速ハンドアームを用いてボールジャグリングの研究を行った.多指ハンドを用いることで高度な操作が実現できる一方で,自由度が多くなるために制御は難しくなる.ここでは,(1)運動連鎖に基づく効率的な投げ上げ,(2)高速視覚フィードバックによる高精度キャッチング,により,2つのボールを片手でジャグリングすることに成功した.このようなハンドアームでのジャグリングの例は世界初である.
  1. 木崎昂裕, 並木明夫, 脇屋慎一, 石川正俊, 野波健蔵, 高速多指ハンドアームと高速ビジョンを用いたボールジャグリングシステム, 日本ロボット学会誌, Vol.30, No.9,pp.102-109, 2012
  2. 木崎昂裕, 並木明夫, 高速多指ロボットハンドアームを用いた2ボールジャグリング動作の研究, 第17回ロボティクスシンポジア講演論文集(萩), pp.427-432, 2012
  3. Takahiro Kizaki and Akio Namiki, Two Ball Juggling with High-Speed Hand-Arm and High-Speed Vision System, 2012 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, pp.1372-1377, 2012
  4. 木崎昂裕, 伊藤直樹, 並木明夫, 2ボールジャグリング動作における持ち直し動作の解析, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(浜松), 1P1-I01, 2012
  5. 木崎昂裕, 西島良雅, 並木明夫, 高速ビジョンを用いた高速ロボットアームによるジャグリング動作, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(岡山), 2P2-P02, 2011
  6. 岡朋暉,並木明夫, 多指ハンドアームによる動力学を考慮したジャグリングの軌道生成, 計測自動制御学会論文集, Vol.54, No.1, pp.46-54, 2018

多指ハンドアームによるけん玉

人間と同様,けんをロボットハンドに握らせた状態での玉のキャッチを実現している.剣の持ち方が試行毎に異なるが,高速ビジョンと触覚センサの双方によって把持したけんの位置計測を行うことで,安定した操作を実現している).視覚と触覚はどちらも1msのレートであり,情報統合が滑らかかつ信頼性の高いものとなっている.
  1. A. Namiki and N. Ito, Ball Catching in Kendama Game by Estimating Grasp Conditions Based on a High-Speed Vision System and Tactile Sensors, Int. Conf. Humanoid Robots, pp.634-639, 2014
  2. 伊藤直樹, 並木明夫, 視覚と触覚情報による把持物体の状態推定を用いたけん玉のキャッチ動作, 第19回ロボティクスシンポジア講演論文集(有馬), pp.431-437, 2014
  3. 伊藤直樹, 並木明夫, 視触覚情報を用いたけん玉の動的キャッチング, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(富山), 3P1-O06, 2014
  4. 伊藤 直樹, 木崎昂裕, 並木明夫, 高速ハンドアームと高速ビジョンを用いたけん玉の動的操り, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(浜松), 1A2-I03, 2012

指先回転機構を有するロボットハンドの開発

ロボットハンドで人間のような繊細な作業を制御するのは困難である.これは,触感覚が十分ではないことと, 表皮が固く摩擦係数も小さいために人間の手のような柔軟性を利用した把持ができないためである. 一方,人の手と異なる機構,異なる自由度を与えることで器用さを向上させることも可能である. ここでは,指先に回転機構を搭載することで,器用な操りを実現している.
  1. Akio Namiki, Dexterous Handling Using Multifingered Hand with Finger Rotation Mechanism Dexterous handling using multifingered hand with finger rotation mechanism, Proc. Int. Conf. on Advanced Mechatronics, pp.439-443, 2010, doi
  2. 林寛和, 並木明夫, 指先回転を用いたロボットハンドによる対象の持ち替え動作, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(旭川), 2A1-F01, 2010
  3. 菅野了也, 並木明夫, 指先旋回軸を有する多指ハンドを用いた把持物体の姿勢制御, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会(福岡), 2A2-B16, 2009

高速多指ハンドの開発

筆者らは,適切なタイミングで大電流を流すことで,高出力と軽量性を両立させたロボットハンドを開発している。ロボットの指は軽量なので後述のアームに比べると高速化が容易であり,各指は約0.1秒で全開可能となった。各関節は,小型ハーモニックドライブ減速機を用いたアクチュエータモジュールからなり,配置を変えることで様々なタイプの高速ハンドが開発されている
  1. Akio Namiki, Yoshiro Imai, Masatoshi Ishikawa, and Makoto Kaneko, Development of a High-speed Multifingered Hand System and Its Application to Catching, 2003 IEEE/RSJ Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems, pp.2666-2671, 2003

高速バッティング

ダイナミックリグラスピング

物体を瞬時に投げ上げてキャッチすることで,一瞬にして物体の持ち替えを可能とします. これは,高速な指の制御と視覚フィードバックによって実現されます.

多指ロボットハンドによるペン回し

ペン回しは一種のジャグリングであり,器用な手の動きが必要となります.ロボットハンドにおいて,触覚フィードバックと指の軌道生成を工夫することで実現しました.
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ロボットハンドによるドリブル

高速グラスピング